相続財産がどれくらいあるのか分からない
2024.06.01
遺産を把握するのに相続財産調査が必要
亡くなった方の遺産がどのくらいあるのか分からないという状況は珍しくありません。
特に離れて暮らしている親や兄弟が亡くなった場合、たとえ交流があったとしても、遺産をすべて把握している相続人はなかなかいないでしょう。
しかし、相続が発生すると、遺産の内容を正確に把握する必要があります。遺産の内容が分からないと、相続放棄をすべきかどうか判断できませんし、遺産分割協議の際に、誰が何をどのくらい相続するのか決めることができません。また、相続税の申告が必要かどうかを判断する際にも遺産の内容を把握していなければなりません。
相続財産の調査は、財産の種類ごとに調べ方が異なりますので、今回は不動産、預貯金、有価証券といった主な財産の調査方法についてそれぞれご紹介します。
不動産の調査方法
不動産の調査では、土地の「地番」や建物の「家屋番号」を調べ、法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得するという流れになります。
「地番」と「家屋番号」を調べるには、その土地や建物の権利証(登記識別情報通知)を確認するのが一番です。権利証は、不動産の名義変更の登記をしたときや、建物を新築して登記した際に法務局から発行される書類です。土地、家屋だけでなく、私道や墓地などの固定資産税の非課税対象の不動産の「地番」を確認することもできます。
なお、固定資産税の納税通知書でも課税されている土地や建物の「地番」と「家屋番号」を確認することができます。
権利証が見つからない場合は、各市町村役場で「名寄帳」という納税義務者が市町村ごとに所有する土地・建物の一覧が記載されたものを取得します。名寄帳には、課税されている不動産はもちろん、納税通知書には載っていない非課税の不動産も記載されています。
ただし、名寄帳は各市町村ごとで管理されているため、調査できるのはその市町村内にある不動産のみです。また、他人と共有している物件は名寄せが難しい場合もあります。名寄帳を取り寄せる際には、不動産の名義変更に必要になる固定資産税評価証明書も取得しておくと、その後の手続きがスムーズになります。
不動産の「地番」と「家屋番号」を把握したら、法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得します。登記事項証明書には所有者の氏名やその他の権利関係など、不動産に関する全ての情報が記載されています。登記事項証明書は遠方の不動産であっても近くの法務局で取得できます。
名寄帳や評価証明書の取得を行う際は、被相続人と請求する方の続柄が分かる戸籍謄本や身分証明書などが必要になりますので、忘れないようにしましょう。
預貯金の調査方法
預貯金の調査は、遺品の中にある通帳やキャッシュカードなどを手掛かりに調査します。
全ての銀行の預貯金を一括して調べることはできないので、預貯金を持っている可能性がある銀行を特定して、一つ一つ個別に調査していくことになります。
預貯金があると推測される銀行の支店に、実印、印鑑証明書や戸籍謄本を持参し自分が法定相続人であることを証明することで、被相続人の預貯金照会を行うことができます。全ての口座の死亡日時点の残高証明書を発行してもらいましょう。相続税がかかる可能性があり通帳を紛失している場合には、亡くなる前の過去3年間分の入出金の動きが分かる取引履歴を取得した方が良い場合があります。
有価証券の調査方法
上場株式、国債や投資信託などの有価証券の調査では、証券会社からの郵便物などを手掛かりに被相続人が取引していた証券会社を割り出します。
証券会社が分かった場合、証券会社から死亡日時点の残高証明書を取得します。被相続人が取引していた証券会社が分からない場合は、証券保管振替機構(通称「ほふり」)で、証券会社の照会をします。被相続人が証券口座をどの証券会社に保有しているか、情報開示請求で把握することができます。
有価証券の調査でも実印、印鑑証明書や戸籍謄本など自分が法定相続人であることが証明できる書類が必要になります。
借金の調査も必要
財産調査のなかでも借金などのマイナスの財産について調べることはとても重要です。
もし、プラスの財産よりも借金の額が大きい場合、債務を相続しないために相続放棄を検討しなければなりません。また、相続税の申告を正確に行うためにもマイナスの財産を把握することは必要です。
借金の調査では、遺品の中から被相続人宛の請求書や督促状などの郵便物が届いていないか確認しましょう。クレジット情報などを管理している「信用情報機関」に故人の借金の状況を開示するよう請求することもできます。借り入れ先が分かったら、各金融業者に被相続人の死亡日付の借入金残高証明書を請求しましょう。
住宅ローンについては、団体信用生命保険(団信)に加入していれば、死亡によって返済が免除されることがありますので、借入先の金融機関に問い合わせましょう。
まとめ
ここまで、不動産、預貯金、有価証券といった主な財産についての調査方法を紹介してきましたが、財産の全てを一回で把握できるような方法はありません。
財産の内容によって一つ一つ個別に調査していく必要があり、時間も手間もかかります。日常では見慣れない書類なども必要になりますので、分からない場合は司法書士などの相続の専門家に相談や調査を依頼することを考えてみるのもよいでしょう。