相続税

配偶者も子供いない場合、相続はどうなるのか

2024.06.01

妻や子供もいない相続はどうなるのか

「相続」と聞くと残された妻や子供たち、家族に財産を残すもの、というイメージがありますが、最近では結婚をしないことを選択する方も増えています。
それでは、配偶者や子供がいない方の相続はどのように行うのでしょうか。両親や兄弟姉妹が相続人になるのか、その場合、財産はどのように分けられることになるのかなど、今回は配偶者や子供がいない方の相続について解説します。

相続人には優先順位がある

亡くなった方の親族であれば誰でも相続人になれるというわけではありません。
遺産を相続する権利を持つ人と各相続人の取得する財産の割合は民法で定められています。この相続権を持つ人を「法定相続人」、財産の相続割合を「法定相続分」といいます。相続人には優先順位が決められていて、順位の高い人が法定相続人となります。そして、それぞれの法定相続分も決められています。


<相続人の優先順位>
・第1順位 直系卑属(子、孫)
・第2順位 直系尊属(父母、祖父母)
・第3順位 兄弟姉妹

配偶者がいる場合、配偶者は上記の優先順位により定まった者と共に常に相続人となります。亡くなった人に配偶者がいて子供がいれば、相続人は配偶者と第1順位の子供となります。相続では妻や夫、子や孫が、親兄弟に優先するのです。

配偶者も子もいない場合の相続

では、亡くなった方に配偶者も子もいない場合を考えてみましょう。
子供がいない場合は、第2順位である亡くなった方の親が相続人となります。亡くなった方には配偶者もいないので、親が全財産を相続します。このとき、父も母も健在であれば、遺産は父と母で2分の1ずつ相続します。どちらか一方だけであれば、残された方が全財産を相続します。
また、父母どちらも亡くなっていて、祖父母が生存している場合は、相続人は祖父母となります。少ないケースではありますが、親も祖父母もいないときは曾祖父母と更に上の世代に相続権が移ることになります。

親や祖父母が既にいない場合は、第3順位である亡くなった方の兄弟姉妹が相続人となります。
兄弟姉妹が1人であれば、その1人が全財産を相続することになり、兄弟姉妹が複数いればその人数で遺産を均等に分けることになります。兄弟姉妹が全て亡くなっている場合でも、兄弟姉妹に子供がいれば、その子供(亡くなった方の甥姪)が代襲相続人として相続の権利を持つことになります。このときの相続の割合は兄弟姉妹と同じになります。
親や祖父母はどんどん上の世代に相続権が移りますが、兄弟姉妹の場合は甥姪までとなり、それ以降の者に相続権は移りません。兄弟姉妹の代襲相続は甥姪の一代までとなっています。

遺言書は法定相続より優先される

亡くなった方が法的に有効な遺言書を残していればその内容に沿って相続が行われます。
遺言の内容が法定相続人以外の人へ財産を譲り渡すものであったり、法定相続分とは異なる相続割合であったりした場合、遺言書が優先され、遺言通りに相続されます。

ただし、法定相続人のうち第1順位と第2順位の者には、民法により一定割合の相続分(遺留分)が保障されています。遺言従って相続した場合において、取得した財産が遺留分に満たなかった相続人は、不足する分の金銭を請求する権利が認められています(遺留分侵害額の請求)。

亡くなった方が遺言書を残していない場合で法定相続分通りに相続を行わないときや、遺言書に記載していない財産があったときには、「遺産分割協議」という相続人全員でどのように財産を相続していくかを話し合う手続きを行うことになります。

まずは相続人を明確にすること

亡くなった方に配偶者や子供がいない場合、どのような家族がいるのかを把握することは非常に重要です。
誰が相続人となって、どのくらい財産を相続するのかが大きく変わってきます。そもそも、子供はいないのかどうか、子供がいない場合は親が健在なのか、兄弟姉妹がいるのか、父または母のみが同じ兄弟姉妹はいるのかなど、亡くなった方の家族関係を確定させる「相続人調査」が必要となります。
また、相続人間で財産をどのように分けるのかを話し合う遺産分割協議を行う際にも、相続人全員の参加が必要不可欠であり、権利のある者が参加していない遺産分割協議は無効になるので、やはり相続人を確定することは大切であり避けることはできません。
亡くなった方に配偶者と子供がいるかいないかにかかわらず、まず相続人調査を行い相続人を明確にすることが重要となります。